岐阜県食品科学研究所

研究開発

岐阜県食品科学研究所では、地域に根ざした研究開発を推進しています。

先進的研究開発
新素材開発、新規機能性付与など、企業が行うにはリスクの大きい先端的な技術に関する研究開発を行います。
地域密着型研究開発
新商品開発、製造プロセスの改善など、現在の製造現場で実用化可能な技術・製品に関する研究開発を行います。
共同研究
当研究所と企業が、それぞれの人材、設備、資金等を有効に活用し、技術や知識を交換しながら製品・技術開発を行います。
受託研究
企業が抱える技術的な課題や企業で実施不可能な研究課題に対し、委託を受けて研究を実施します。
研究会活動
研究会を組織し、企業と意見交換をしながら研究開発を進めています。

令和6年度研究課題

地場産業の技術承継・新商品開発プロジェクト

県産米を有効活用した岐阜ブランド商品の開発
 岐阜県内で栽培されている米を使用した新規の商品開発や用途開拓を行い、岐阜ブランドの向上を目指します。

1)新規酒米の評価と清酒製品の開発

 昨年度は新規酒米を使って県内酒造場で試験醸造を実施し、醸造特性を評価しました。本年度は複数の酒造場で清酒製造を開始します。また、酒米に高温障害が発生した時の醸造方法について検討します。

2)和菓子の高品質化に関する研究

 昨年度は酒まんじゅうの皮に使う「発酵もと」から分離した微生物の発酵性や生成物の特徴を調べました。本年度は酒まんじゅうの高品質化に向けて、これら微生物を活用した製造方法の構築を行います。

3)ハツシモα化米粉の特性評価と米粉パンへの利用

 「ハツシモ岐阜SL」の加工食品への用途拡大を目指し、昨年度はα化米粉の添加が米粉パンの硬さや形状に与える影響を評価しました。今年度は、米粉の粒径と米粉パンの品質との関係を調査します。

県内製造業のDX支援研究プロジェクト

IoTを活用した清酒の高品質化研究
 清酒貯蔵庫の温度測定システムを構築して、貯蔵精度の改良と熟成度の把握を可能にし、品質管理技術の向上を目指します。昨年度はシステムを現場にて試験し、積算温度(貯蔵温度×期間)の増加で、一部の成分が変化し、異なる官能評価が得られることを確認しました。本年度は、成分の変化について、さらに検討を加えます。

新価値創造によるサステイナブル社会推進プロジェクト

有用微生物の探索と機能性食品の開発に関する研究
 乳酸菌等を利用した食品開発は、嗜好性の向上のみならず、その代謝産物ならびに菌体成分の機能性が求められる時代になっており、現に機能性表示食品等として多数商品化されています。本年度は主に県内資源から分離・選抜した酢酸菌の機能性評価研究に取り組みます。

地域密着型研究

県産資源を活用した酒類の開発
 近年、酒類業界においてもGI(地理的表示)の取得など地域性に着目した取り組みが増えています。そこで地域性をアピールポイントとした酒類の開発のため、県独自の酵母や地元産原材料を活用した酒類の開発を目指します。本年度は県内から採取した酵母を用いてビール事業者での実地試験や、蜂産品を活用した酒類の開発を行います。
ベビーリーフの機能性向上
 県内には水資源が豊富なこともあり、ベビーリーフ生産業者が集積しています。そこで日持ちのよいベビーリーフを生産するため、稲の栽培で倒伏抑止効果等の報告があるケイ酸塩添加栽培法を試行します。本年度は、ベビーリーフの生育等に及ぼすケイ酸塩の影響評価を行います。
食品機能性成分の簡易的な類推手法の開発
 食品に含まれる栄養成分や機能性成分はその効果が期待されていますが、測定には高価な機器や測定技術が必要となり、含有量を常に管理することは難しい状況です。このため、これらの成分量を類推可能であり簡易的に測定できる指標を探索し、その有効性を評価します。

代表的な研究課題

飛騨ホウレンソウ加工品の機能性成分に関する研究

研究実施期間等
平成29年度(受託研究)
研究概要
飛騨地方は涼冷な気候を利用した“夏秋ホウレンソウ”の産地であり、高山市は10年以上も全国一の生産量(8,270t/2017年)を誇っています。ミチナル株式会社(高山市)からの受託研究により、飛騨産の冷凍ホウレンソウに“光の刺激から目の網膜を保護する成分「ルテイン」”が高含有(製品100g中10mg以上含有)されていることが明らかになり、機能性表示食品への届出を支援しました。
ルテイン高含有IQF冷凍ホウレンソウ「ルテイン ルンルン ほうれん草」(届出番号:E647)/写真提供 ミチナル株式会社

飛騨特産エゴマを用いた機能性調味料の開発

研究実施期間等
平成27~31年度(2020清流の国ブランド開発プロジェクト)
平成27年度(産学官共同研究助成金事業/(公財)岐阜県研究開発財団
研究概要
エゴマオイルブームにより大量に廃棄処分されていた搾油済み子実の有効活用を図るため、(有)糀屋柴田春次商店(高山市)と共同研究を実施しました。独自の発酵・醸造技術により、搾油済み子実に多く残留するα-リノレン酸からガン細胞の増殖抑制効果が報告されるリノレン酸エチルを醸成・高含有させた発酵調味料(米味噌比で20倍以上に相当する555~858mg/100g)の開発に成功し、ドレッシングタイプ調味料「飛騨えごまの醸しだれ」として商品化を達成しました(平成29年10月発売)。
飛騨えごまの醸しだれ

イソフラボン高含有大豆もやし及び大豆もやし由来機能性食品等の開発

研究実施期間等
平成26年度(受託研究事業)
研究概要
日本初の生鮮機能性表示食品「大豆イソフラボン子大豆もやし」(届出番号A80)の機能性強化を図る目的で、(株)サラダコスモ(中津川市)と共同研究を実施しました。新製法(特許出願済)により、従来のもやしに比べてイソフラボン含量を約2.4倍に強化することに成功し、大豆スーパースプラウト「ベジフラボン」(機能性表示食品届出番号A206)として商品化を達成しました。
ベジフラボン

G2酵母の開発

研究実施期間等
平成28~令和2年度(拠点結集による地域産業新展開プロジェクト)
研究概要
日本酒の魅力の一つは果実様の香りであり、最近はリンゴ様の香りが好まれています。この香りは酵母により作られる「カプロン酸エチル」に由来します。従来の岐阜県酵母「G酵母」をもとに、カプロン酸エチルを3倍以上の濃度に高められる新酵母「G2酵母」を開発しました。
活用実績等
平成30年度に県内15酒造場で清酒の販売が開始され、令和2年度までの3年間で24酒造場に使用されました。G酵母シリーズの一つとして、引き続き県内酒造場へ頒布を行っています。
微生物資源の頒布
 研究成果普及のために研究開発で育種した清酒酵母を県内食品企業へ頒布します。詳細は微生物資源の頒布についてをご覧ください。
「G2酵母」を使用した清酒